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【軽井沢・脇田美術館】脇田和アトリエ山荘の特別公開に参加

「名作・名建築・美食が楽しめるおススメ美術館5選」の記事でもご紹介した「脇田美術館」。その館内には、脇田和のアトリエが併設されています。普段は非公開なのですが、一定期間のみ予約制で一般公開されます。今回は、その公開日に合わせて見学に足を運んだ感想をお伝えします。

わずか2つの要望しか出さず、すべてを建築家・吉村順三にゆだねる

「脇田和アトリエ山荘」は、脇田のアトリエ兼住居です。1970年に、脇田がともに東京藝術大学で教鞭をとり、新制作派協会(現・新制作協会)で活動した建築家・吉村順三の設計により建てられました。設計にあたり、脇田は「四季を通じて制作活動がしたい」こと。そして「庭に池をつくり、絵のモチーフとなる動植物を観察したい」という、2つの注文以外は出さなかったと言います。この土地は湿地であったことから、残念ながら基礎杭を打った時点で水が抜け、池は実現しませんでした。それでも緑の芝生で彩られた庭は、周囲の木々と調和し、やすらぎを私たちに届けてくれています。

脇田美術館

脇田和アトリエ山荘は、まず外観が特徴的です。住居部分は2階に持ち上げ、1階はボイラー室と作業室のみ。まさに森の中に浮遊した感じの建物です。これはこの土地が湿地だったことに起因するそうです。ちなみにピロティには暖炉のようなものがありました。気候のいいときはここでBBQでもしたのかな? そんな勝手な想像をしながら階段を上っていきました。

脇田美術館 ピロティ

木質感あふれる天井に対し、色鮮やかなカーペットにソファが印象的

脇田美術館 リビング

玄関は、意外と狭い印象です。でも、確かにアトリエ兼住居ですから、そんなに頻繁に来客もなかったと想像すると、これで十分。それならば他の居住空間およびアトリエを広くしたほうがいいですからね。シンプルで合理的な設計・デザインをする吉村順三の思いが感じられた気がします。入って右手に向かうと、そこには細長く、開放的なリビング・ダイニング空間が広がります。正面には暖炉が。北側の壁を背にしてソファが置かれ、南の庭の借景が楽しめるようにレイアウトされています。ダイニングやリビングに座って庭を眺めるとき、視界に入る景色を計算して軒の出が決められたそうです。

脇田美術館 庭の眺め

注目したのは、天井にはカラマツを張り巡らした木質感あふれる設えなのに対し、床にはカーペットが敷かれ、それもソファに合わせたパープル色。そしてダイニングのソファやベンチは鮮やかなレッドを用いています。この色は、生地サンプルから脇田が選んだものだそうですが、このあたりにも、日本の伝統とモダニズムの融合を図った吉村順三の設計思想が垣間見える気がします。

全開放できるなんて。自然と一体になることで感性がより磨かれる

脇田美術館 窓

開口部は、雨戸、網戸、ガラス戸、障子のすべてが戸袋に引き込まれるように設計されています。これだけ広い開口部がガラス戸を含め、すべてを視界から外せるようになるなんて。もちろん見学時には開放されませんでしたが、そうなれば風も抜け、気持ちいいだろうな。きっと脇田もそうやって感性を豊かにし、創作意欲を沸かせたのだろうな。ソファに座って庭を眺めながら、そんな思いを巡らせました。

脇田美術館 アトリエ

暖炉の横を抜けて廊下を進むと、奥にアトリエが、さらに奥には書庫、画庫が展開されます。アトリエは通常、光の量を一定に保ちやすい北側の窓から彩光が取られます。しかし脇田のアトリエは南側に大きく開口が取られているのです。これはきっと、「庭に池をつくり、絵のモチーフとなる動植物を観察したい」という、脇田の思いを酌んだプランなのでしょう。

脇田美術館 アトリエ

まとめ

シンプルだけれども、そこかしこに「なるほどな」という仕掛けが込められていて、それを発見するのが面白かったです。見学時には知らなかったのですが、1階のボイラー室で暖められた空気を、二階の窓下部分や床下に供給することで寒さ対策を施していたそう。当時としてはかなりの先端技術を用いて、快適な暮らしを担保していたというのも興味がそそられました。当然のことではありますが、見切りなども美しく、建築好きな方は、ぜひ一般公開日をチェックして訪れてみてください。

脇田美術館 アクセス

名称 脇田美術館
所在地 北佐久郡軽井沢町旧道 1570-4
電話番号 0267-42-2639
駐車場 有り
一般公開 毎年秋に開催

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