草軽鉄道・北軽井沢駅舎
HISTORY

【軽井沢・草軽電気鉄道】鉄道ファン必見!大正・昭和で活躍した廃線

今から約100年に、新軽井沢(現在のJR軽井沢駅のすぐそば)から旧軽井沢を経て、小瀬、そして草津温泉まで伸びる列車が走っていたことをご存知でしょうか。それが草軽軽便鉄道、後の草軽電気鉄道です。軽井沢本通りの少し東側を走り、旧軽井沢ロータリーを貫くようにして伸びるそれは、総延長55.5キロを所要時間2時間33分(実際には3時間から4時間はかかったようです)で結んでいたそう。今回は、この軽井沢の発展を支えた草軽電気鉄道の歴史、そしてその名残を巡る旅に出ます。

草軽鉄道・旧軽井沢駅舎
旧軽井沢駅。今はお土産物屋さんですが・・・

スイス登山鉄道をイメージし、開通。乗客はもちろん物資輸送にも活躍

明治42年(1909年)に設立委員会が発足。大正元年(1912年)9月に、草津軽便鉄道株式会社は設立されます。そして翌大正2年に軽井沢を起点として測量を開始し、その年の11月25日に新軽井沢で起工式が行われるに至ります。

線路は北へ一直線に延び、旧軽井沢を経て、三笠へ。三笠からは大きく西へ曲がり、現在の旧軽井沢ゴルフ場の北斜面の急勾配を登り、鶴溜駅へ。その後、北へ向きを変え斜面を登りながら小瀬(後の小瀬温泉)へとつながるルート。これが第一期工事で、大正4年(1915年)7月22日に開業しました。

軽井沢・三笠通り
現在の三笠通り。左側の道路に草軽電気鉄道が走っていました。左側道路のほうが一段高くなっているのは、線路の名残だそうです。

人力車や馬車と同じ速度???

ドイツ・コッペル社製のC型蒸気機関車で運行され、軌幅は2フィート6インチと狭く、きっと乗り心地はそうよくはなかったことでしょう。ものの本によると、それは単線で二両のマッチ箱のような小さな客車を連結。ゆっくりと進んだそうで、旧軽井沢に着くのは人力車や乗合馬車とほとんど同時だったといいますから、ずいぶんとのどかなものです。それでも赤い筋の入った制帽をかぶった駅長さんが晴れやかに立ち、乗客が乗り終わると挙手敬礼して見送ったことや、ダイヤモンド形の高い煙突が特長の均整の取れた機関車は人気を博し、多くの人が利用したそうです。

大正6年(1917年)7月には、小瀬から吾妻間の第二期工事が終了。開業と同時に大日本軌道製の8トン蒸気機関車が二両増備されます。大正8年(1919年)11月に吾妻~嬬恋間が開業。この頃から軽井沢では別荘や避暑客が大幅に増え、草軽軽便鉄道はこの年、1万5000円余の純益を計上したそうです。

大正13年に電化。愛称「カブトムシ」が走る!

大正13年(1924年)2月には社名を草津電気鉄道に改め、資本金を200万円に増資。11月より、鉄道を電化します。電気機関車はアメリカのジェフリー社製で、パンタグラフの形が「くわがた」に似ていることから、「カブトムシ」の愛称が付いたといいます。ちなみにこの電気機関車は、もともとは発電所建設に使用されていたもので、そこに運転室を取り付けたのだそうです。

大正15年(1926年)8月に嬬恋~草津前口間10キロが、9月には草津前口~草津温泉7キロが開業し、ついに新軽井沢から草津温泉間全線55.5キロが架線式により開業します。電車賃は2円。馬で行けば9時間の行程でしたから、ずいぶんと便利になりました(馬の料金は1円50銭)。

硫黄や石炭なども運ばれ、経済発展を支える

草軽鉄道は乗客だけでなく、貨物輸送も行いました。吾妻川電力の発電所建設のための資材運搬にはじまり、吾妻・草津などの硫黄鉱山で産出された硫黄を軽井沢に運ぶとともに、精錬に必要な石炭を鉱山に輸送。さらには草津温泉街への食糧を中心とした物資、周辺町村で収穫された農産品を運ぶなど、第二次世界大戦の終盤頃には、その輸送はピークに達します。貨物専用列車もあったようですが、通常の定期列車は貨客混合列車が当たり前だったそうです。

まとめ

その後、バスの運行や国鉄長野原線の開業、台風による橋梁流失などから、昭和35年(1960年)に新軽井沢~上州三原間が、昭和37年(1962年)には上州三原~草津温泉間が廃止。草軽電気鉄道の歴史は幕を閉じました。

この草軽電気鉄道の面影を感じたい方もいることでしょう。草軽電気鉄道展示コーナーがあった旧駅舎(草軽電鉄の新軽井沢ではなく、JR軽井沢駅舎)を復元した「(旧)軽井沢駅舎記念館」は、平成29年3月末で閉館しましたが、館内に展示されていた鉄道関連資料は、一部を除いて旧軽井沢の「軽井沢観光会館」の2階展示スペースへ移設し、「軽井沢鉄道ミニ博物館」として再オープンしています。写真撮影が禁止だったので、掲載できないのが残念です。

草軽鉄道の新軽井沢駅跡地
草軽電気鉄道「新軽井沢」跡地。駅舎の影も形もありません。ちなみに近々、再開発がスタートするようで、この跡地が見られるのもそう長くはないかも知れません。
北軽井沢駅。この建物の道路を隔てた向かい側に「北軽井沢ふるさと館」があります。そこに草軽電気鉄道の資料展示や資料販売がされています。でも、訪れた日はたまたま休館日! 中が見られずに残念!
北軽井沢ふるさと館

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