HISTORY

【軽井沢・自然】軽井沢の豊かな自然が誕生した理由・歴史を知る

豊かな自然に包まれた軽井沢。新鮮で爽やかな空気を深呼吸すると、心も身体もリフレッシュします。そんな豊かな緑は、ずっとこの地を守り続けてきたのかと言えば、実はそうではないのです。今回は、軽井沢の自然の歴史を紐解きながら、軽井沢を彩る樹種をご紹介したいと思います。

軽井沢を愛する人々の思いが詰まったカラマツ植林事業

現在の軽井沢は、そのほとんどが緑で覆われています。しかし、その昔は長年にわたる浅間山の噴火の影響をはじめ、牛や馬の放牧地として利用していたこともあり、森林は少なかったそうです。

有史以前の軽井沢に目を向けてみると、古くは縄文時代より人々はこの地で生活を営んでいました。高冷な気候であったにも関わらず、鳥獣や果実、球根類が豊富で、狩場や牧場に適していたと考えられています。

しかし、江戸時代を迎えると中山道の宿場町として一部は栄えるものの、毎年のように襲う冷害や浅間山の噴火によって農作物は雑穀がほとんど。大雨が降ると土砂崩れの恐れもある危険な場所で、緑も今のように豊かではなかったようです。

大きな転機は、宣教師であるアレクサンダー・クロフト・ショーが、明治18年に軽井沢を訪れたこと。その後、次々と別荘が建つようになり、実業家・雨宮敬次郎(あまのみや けいじろう)が、1100町歩もの広大な土地を手に入れます。さまざまな事業を試みた後、たどり着いたのが植林事業。計700万本ものカラマツ(落葉松)を植えたのです。

千ヶ滝雨宮カラマツ
千ヶ滝別荘地に残る樹齢100年を超える「雨宮カラマツ」

また大正期に入ると、貿易商社「野澤組」の野澤源次郎氏が旧軽井沢付近に約200万坪の土地を取得し、同じくカラマツを植林します。これらの流れを受け、戦後も盛んにカラマツの植林を行った結果、緑豊かな軽井沢が形成されていきました。長年の努力もあり、現在の軽井沢の林のほとんどが、カラマツの人工林で占められています。

軽井沢・三笠通りのカラマツ
野澤源次郎が植林した樹齢100年を超えるカラマツ。(三笠通り)

とは言いながらも軽井沢町の「町の木」は、コブシが指定されています。ちなみに町花は「サクラソウ」、町鳥は「アカハラ」、町獣は「二ホンリス」です。

コブシは北国に春が訪れると真っ先に白い花を咲かせます。軽井沢では、4月下旬から5月上旬にかけて開花します。コブシという、ちょっとユニークな名前の由来は、「秋に実るでこぼこした果実の形が、拳(こぶし)に似ているから」「開花する直前のつぼみを、子どもの握りこぶしに見立てた」という説があります。

軽井沢で主にみられる代表的な樹木をご紹介!

1.天然カラマツ林/日本特産の針葉樹

軽井沢カラマツ林
旧軽井沢周辺の別荘地は、カラマツの林に包まれています。

冒頭にもご紹介したように、軽井沢はカラマツの人工林が多いのですが、天然のカラマツ林も各地で見ることができます。その代表例が浅間山の山腹に広がる天然カラマツ林。実は天然のカラマツ林は日本でも少なく、浅間山の天然カラマツの種子から苗木をつくり、各地で植林されているそうです。

2.ハルニレ林/少し湿った平坦地に育つニレ科の落葉広葉樹

セゾン美術館のハルニレ
セゾン美術館のハルニレ

白糸の滝から竜返しの滝に至る信濃路自然歩道周辺や湯川に沿う場所に、ハルニレ林が残っています。漢字で書くと「春楡」。春に花を咲かせることから、このように名づけられました。北海道から九州まで広く分布(特に北方に多い)。高さ35mもの大木になりますが、長野県内ではほとんどが伐採され、軽井沢町内に残るハルニレは貴重なものとなっています。

ハルニレの樹皮
ハルニレの樹皮
ハルニレの葉
ハルニレの葉

3.ミズナラ・コナラ林/ともに落葉広葉樹

浅間山山麓に広がるミズナラ林、碓氷峠や八風山に見られるコナラ、ミズナラ林も見どころです。秋にはドングリを実らせることから、動物たちにとっても大切な木です。

4.アカマツ/常緑針葉樹

軽井沢・アカマツ
千ヶ滝別荘地の付近

樹皮が赤いことが特徴。浅間山麓で広く植林されており、六里ヶ原や鬼押出しでは、溶岩のすき間などから生えている姿が見られます。

5.トチノキ/落葉広葉樹

水気を好み、適度に湿気のある肥沃な土地に育つことから、軽井沢の気候・風土に適した樹木の一つ。大きなものは周囲4mを超えるまでに成長するそうで、軽井沢・湯川で大木がみられます。

6.シラカバ/落葉広葉樹

軽井沢・シラカバ
白樺台別荘地の付近

白い樹皮が特徴で、正式名はシラカンバ。気候のよい時期には鮮やかな緑、そして秋には黄色い葉になり、美しく彩ります。

7.ウラジロモミ/常緑針葉樹

日本特産の樹木で、福島県以南の本州、四国、九州に自生します。軽井沢では別荘地内や里山に点々と分布。モミノキとともにクリスマスツリーとして利用されています。

軽井沢ウラジロモミ
軽井沢ウラジロモミ

8.モミジ/紅葉が鮮やかな木の代表種。一般的に落葉樹

セゾン美術館のオオモミジ

軽井沢では広範囲にわたり、モミジが自生しています。涼しい気候であることから、鮮やかに色づき、新緑の頃はもちろんですが、紅葉の時期は多くの人の目を楽しませてくれます。小ぶりなイロハモミジが多く、オオモミジ、ヤマモミジ、カエデなど、種類が豊富なのも特徴です。

まとめ

軽井沢が緑豊かになったのは、この地を愛する人々の力があったからこそ。その緑を受け継ぎ、大切に守っているのも、やはり軽井沢を愛する人々です。軽井沢を訪れ、自然に触れるとき、そんな人々の想いを思い返してみるのも大切なのではないでしょうか。

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